今回は適応障害で休職しているときにまずやるべきことを解説します。
仕事に戻らないといけない焦りや休み続ける状況から抜け出したい気持ちはわかります。
ですが急いで特別な経験をしたりや行動を起こしたりする必要はありません。
むしろ今までないがしろにしてきた生活に目を向けることこそ、仕事から離れたあなたがやるべきことです。
- 意識的に何もせず、睡眠によって休むことに専念する
- 散歩・日記・食事で、調子を安定させる
- 読書で自分の特性や他の人の生き方を理解する
- (片付け・断捨離で物理的・心理的余裕をつくる)
9ヶ月の休職を経験し、現在は派遣社員として働いている私が経験して、今の生活の土台にもなっている行動を解説していきます。
①休職期間のはじめは休むことに専念
休職期間に真っ先にすべきことは、休むことをおいて他にありません。
心だけではなく身体も弱っているこの時期は、休むのが仕事です。
意識して心と身体を休ませる
適応障害になるほど心をすり減らしてしまった状況では、何をおいても休まなければ次に何もすることはできません。
そこであえて何もしないことによって、頭と身体を一緒に休めることをすすめます。
森田療法と呼ばれる精神療法では、最初の一週間は絶対臥褥期(ぜったいがじょくき)として終日横になったまま過ごします。
- 不安や症状をあるがままに捉える
→ 次第に不安が消えて、コントロールできることを実感する。 - 気力が回復しつつ、退屈を感じ始める
→ 行動する意欲が起こる
疲れていると感じたり何もする意欲がわかないときには、意識的に何もしないことをしてみましょう。
何もしないとは寝転がるだけでいいし、むしろなにかしなくてはいけない焦りに対抗して、自分の意志によって動かず休むことです。
ただベッドで寝たり、窓際でぼーっと外を眺めているだけで、難しいことも考えない。
不安や心配事が思い浮かんでも、深く考えることもなく放っておけばいいです。
しばらくしているうちに気力と体力の回復を感じるでしょう。
ストレス源の仕事や職場から距離を取る
適応障害の最大の要因であるストレス源からは特に大きく離れましょう。
休職した人の多くは今の仕事に対してストレスを感じています。可能な限り職場とは距離をとるのが望ましいです。
そのため職場の人とは話さず、他の人とも仕事に関する話もしません。
職場の人から話がきても、「病院から距離をおいて欲しいと頼まれている」と言って断れば良いです。
病院に相談しても必ず納得するし、協力してくれるはずです。
実際に仕事をしていなくても、今は関係する事柄に触れるだけで過去のストレスの原因になった出来事が思い起こされます。
それではせっかくの休養が休みになりません。
身体が満足するまで沢山の睡眠を摂る
休息を取る上で重要な位置づけである睡眠は、必ず8時間以上は十分に取ってください。
統計的にいって大多数の人が8時間程度の睡眠を必要としており、一方で働きながらそれだけの時間を睡眠に費やせている人は少ないです。
不安や心配も寝れば忘れてしまうことがあるように、身体を休めるのが心の安定に繋がります。
寝るときは以下のことを心がければ、質の良い睡眠を取ることができます。
- 一定の時間に就寝して、起きるときに目覚ましは使わない
- 光が気になるときはアイマスクを使う
- 音が気になるときは波や火などの自然音を流す
目覚ましをかけないまま寝て、起きるときは身体の感覚に任せましょう。
身体が満足するまで眠ることができる状況が、理想的な睡眠時間にほかならないからです。
寝るときに光が気になるならアイマスクを使ったり、音が気になるなら自然音があるとよく眠れるので、寝付きが悪いときには試してみてください。
動画やゲームはやり過ぎに注意
うつ状態になった初期の体力もやる気もなんにも無いときは、マイナスな感情ばかりに頭がいっぱいになってしまいます。
面白くて楽しいゲームや動画は注意をそちらに向けさせて没頭させる力があります。
マイナス感情に支配されるくらいであれば、シャットアウトするためにゲームをしたり動画を見てもいいでしょう。
そのときに注意してほしいのはゲームや動画にのめり込みすぎて、最優先事項である休息や睡眠を絶対に忘れないことです。
生活リズムが守れないことに自己嫌悪してしまったり、昼夜逆転の生活は体調にも支障をきしかねません。
優先順位はきっちりと休むことを最上位におきつつ、例えば日付が変わる前には寝ると決めておきましょう。
それ以外の時間なら没頭しすぎない程度にうまく付き合っていきます。
②心と身体の調子を安定させる
しばらくの間何もせず、よく睡眠を取ることで身体を動かす意欲や体力も戻ってきます。
とはいえまだ特別なことに取り組む必要はなく、時間をかけて調子を取り戻すことに専念しましょう。
歩いてストレスを減らす
有酸素運動であればなんでもいいですが、体力も気力もほとんどなくても行いやすい軽い散歩で今は十分です。
有酸素運動は不安や抑うつ感を改善する脳内神経物質のセロトニンが活性化するのを促し、歩くことでストレスの低減や、ポジティブな気分にして心を楽にします。
やりすぎて足が痛くなり、歩く習慣が身につかないのも本末転倒なので、10~20分からで構いません。
また太陽の光を浴びることによって生活リズムや体内時計が整いやすくなりますが、日中に歩いていると人目が気になるのも確かです。
身体を動かすことが目的なので、無理せず夕方や夜に少しだけでも外に出て歩きましょう。
外に出るモチベーションとして、音楽やラジオを聞きながら歩くのもとっかかりやすくなります。
簡単な日記でメンタルを安定させる
日々の考えや不安なことを文字にして日記に書くと、気持ちを落ち着けることに役立ちます。
誰かに話すだけで気持ちが楽になることがあるように、文章として不安を吐き出すことも同じような効果があります。
日記を書くといってもたいしたものを書く必要はなく、数行書くだけでも大丈夫です。
それでも書くのに困るなら、睡眠時間と起きたときの気分を書く睡眠日誌をつけるだけでも睡眠の改善に効果があります。
慣れてきたらその日の気分やふと思い浮かんだこと、不安なことや心配事を書くとネガティブな気持ちも受け入れやすくなります。
どう日記をつけていいかわからない場合、「バレットジャーナル」がおすすめです。
メモ帳をベースにしてカスタマイズできるため、いつからでも始めやすく、書くことの縛りもフォーマットもないからです。
その日のtodoリスト、睡眠の時間、習慣の整理、その日思ったことや不安・心配事のメモなどを私は書いて使っていました。
無理せずバランスの良い食事を摂る
食事は難しく考えず必要なだけ食べ、必要な栄養素を摂るために、野菜を食べようと意識しておきます。
偏った食事や食事を抜いたり、食べるものを制限するのは体調を崩す原因にもなり、ストレスをためて身体を壊しかねません。
とはいえこの時期、自炊するほどの気力がわかないときもあるはず。
スーパーやコンビニなどで手軽に食べられて栄養バランスが考えられた商品もあるので、それらで補う手段も考えておきます。
- そのまま食べられるサラダ
- 野菜ジュース
- 自炊の手間がいらない惣菜や冷凍食品
毎日自炊するのがストレスになっては心身を整えるのを阻害してしまうので、無理のない範囲で料理しましょう。
また自分で料理を作ったり、食材を調達したりするのが辛いのであれば、実家に帰って家族に手助けを求めてもいいと思います。
③身の回りを整え、自分と周囲を理解する
十分な休息を取り、心身が落ち着いてきても焦ってはいけません。
適応障害になった原因やこれからの生き方について考える時間が必要です。
今までと同じ生き方をしていては、同じように適応障害になってしまってもおかしくないからです。
自分の特性を理解する読書
適応障害やうつ症状に関して書かれた本を読むことによって、今の自分に起きている症状やその仕組みを知ります。
病院に尋ねれば教えてくれますが、最初の頃は気力もないので症状を気にする余裕は無いでしょう。
かといって再診時には診察時間も長くて10分程度だと思うので、詳しく教えてもらうことも難しいです。
そのため本を使い自分で勉強することで、適応障害やうつ状態になった原因を理解し、自分の特性を理解して対処法を考えていきます。
病院に通ったとしても、カウンセリングを受けるにしても、結局のところ今の状況をどう自分で乗り越えていくのかが、休職から戻るために必要になる時期が来ます。
次の職場も生き方など、進むべき方向を勝手に他の人が用意してくれるわけではないのです。
自分自身を理解して原因を分析しなければ、どう進むべきかは見えてきません。
知らなかった他人の生き方を読む
自分を知ると同時に、自分とは違う生き方をしている人から学ぶことで世界の見方を広げましょう。
うつ状態になる人の特徴として、「こうあるべき」と固執しがちなタイプの人が多く、生き方についても「これしかない」と視野が狭まっています。
ですが様々な生き方を実践する人たちの本を読むと、知らなかった方法や道で生きている人もたくさんいます。
例えば必ずしも定年まで会社に勤めるわけではなく、都会にいる必要もなく、結婚して家族を持たないといけないわけでもありません。
色々な生き方から少しずつ使えそうなところを集めて、それまでの生き方を修正しましょう。
他人の生き方を学べる読書は時間のある休職中にこそするべきです。
図書館で借りたりや本屋で買うのももちろんのこと、3ヶ月99円のキャンペーンを頻繁に行っているKindle Unlimitedを使うと、外に出ずとも沢山の本が読めて便利です。
自己啓発本とは距離を取る
一方で自己啓発本の読み過ぎや、影響のされ方には注意が必要です。
大抵の場合、うつ状態や休職状態で心も身体も弱っている人に向けて書かれた自己啓発本はないからです。
毎日仕事に通ってその上で更に自己を研鑽しようと考えるような人が手に取るのを、自己啓発本は想定しています。
真に受けるとただでさえ少ない気力と体力をすり減らしかねません。
そのため少しだけ距離を取ってのめり込みすぎないようにしながら、本の内容を読み取ろうとしましょう。
休職期間の参考図書
参考として私が休職期間に読んだ中で特に面白いと感じた本をいくつか挙げておりますので、興味がある本を探してみてください。
片付けや断捨離で心理的・金銭的負担を減らす
頭を動かすだけでは疲れてしまうので、もう少し身体を動かせるような軽作業をするのもリフレッシュになります。
- 家から出なくてもできる軽作業
- 空間に余裕ができると、心の余裕もできる
- フリマアプリで売れば収入になる
- 簡単にできて達成感も得やすい
部屋の片付けであれば少ない気力と体力でもやりやすく達成感を得やすいです。
不要なボールペン一本を捨てることからでも片付いたことを実感できます。
休職期間中は1日の多くを自分の部屋で過ごすので、ものを減らして整理整頓すると、次第に気分も軽くなります。
まだ価値の有りそうなものを断舎離すれば、フリマアプリを使ってお金も手に入ります。
どこから手を付けていいか分からなければ、衣服類から片付けるのがいいでしょう。
かさばって場所を取りがちなので、目に見えて減ったことがわかりやすくモチベーションが上がります。
休職中だからこそ日々の生活に目を向ける
睡眠や食事など何気ない行動をいまさら「やるべきこと」として意識する必要があるのかと思われるかもしれません。
ですが休職しているから、時間があるからといって、特別なことに手を付ける必要はないです。
もし次にやりたいことや進むべき道筋がわかったとしても、休んだり体力を維持したり、しっかりとした生活基盤がないと進んでいけません。
私も早く状況を変えようと思い、自己分析をしてやりたいことを見つけようとしました。
手っ取り早く今の状況から抜け出そうと自分だけでお金を稼ぐ手段はないかと挑戦したりしました。
結果としてそれらは全て失敗に終わり、何もできない無力さや無価値感に苛まれて一層ひどい落ち込みに。
立ち直るまでの1週間は全く何もできなくなってしまいました。
いつかやるべきことが見つかったとき動けるように、今は土台を作るための期間です。
まずしっかりとした休息をとり、普段の生活に目を向けて今できることだけをやるのが、休職期間に必要なことなのです。
休職期間は地に足をつけた生活を送る
今回は適応障害で休職になったときにやるべきことについて解説しました。
決して特別なことをする必要はなく、むしろ普段の生活に目を向けて、今後の土台や基盤となるようなしっかりとした生活を送ることに注力すべきです。
- 意識的に何もせず、睡眠によって休むことに専念する
- 散歩・日記・食事で、調子を安定させる
- 読書で自分の特性や他の人の生き方を理解する
- (片付け・断捨離で物理的・心理的余裕をつくる)
もし今後復職しても転職しても、仕事がなかったとしても、どんな道を選んでも生活は続いていきます。
何をするにしても生活は生きる上での基礎基盤になるのですから、固めるための時間として地に足をつけた生活を送ることが今やるべきことです。